東京高等裁判所 平成7年(行コ)44号 判決 1995年11月27日
東京都立川市錦町二丁目九番二六号
控訴人
吉澤京夫
右同所
控訴人
吉澤志ん子
右両名訴訟代理人弁護士
和田良一
東京都立川市高松町二丁目二六番一二号
被控訴人
立川税務署長 牛久正治
右指定代理人
矢澤敬幸
同
高野博
同
新居克秀
同
柏倉幸夫
同
海谷仁孝
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成四年一月二八日付けで控訴人らの平成二年八月二六日相続開始にかかる相続税についてした各過少申告加算税賦課決定(ただし、控訴人吉澤京夫にかかる賦課決定については、平成五年四月一六日付け及び平成六年一〇月一一日付け各過少申告加算税変更決定により一七八九万二五〇〇円に減額された後のもの、控訴人吉澤志ん子にかかる賦課決定については、平成五年四月一六日付け過少申告加算税変更決定により一五万八〇〇〇に減額された後のもの)をいずれも取り消す。
二 被控訴人
本件控訴をいずれも棄却する。
第二事案の概要
本件は、控訴人らが相続開始時において所有権の帰属について係争中の不動産を課税財産に含めないで相続税を申告したが、被控訴人にしょうようされて右不動産を課税財産に含めて修正申告をしたところ、被控訴人から過少申告加算税賦課決定を受けたため、右不動産を申告しなかったことには正当な理由があること、右修正申告は更正があるべきことを予知してされたものではないことなどを理由として右賦課決定の取消しを求めたころ、原判決がいずれもこれを棄却したので、控訴人らが控訴した事案である。
以上のほかは、原判決「事実及び理由」中の「第二、事案の概要」の一ないし三に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
第三当裁判所の判断
当裁判所も控訴人らの請求は理由がないものと判断する。その理由は次のとおり付加訂正するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」の一ないし四に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決一三枚目表七行目の末尾の次に「後記宅野ミツ子がその担当者である旨知らされ、」を加え、同九行目から同一〇行目にかけての「連絡があった。」を「連絡があり、同日を右調査日と決定した。」に改める。
2 同一三枚目裏四行目の末尾の次に「控訴人らは、右質問は調査ではなく、指導であり、右係官らの修正申告をしてもらう必要があると考えているとの話はあいまいなものである旨主張するが、後記のとおり右質問は調査であり、それ故、当日の右係官らの右話もその限度のものであったと解するのが自然かつ合理的であると考えられるから、右主張は採用できない。」を、同五行目の「同年一一月二七日、」の次に「右調査結果がまとまったので来署してほしい旨の事前の電話連絡に応じて」を、同七行目の「しょうようした。」の次に「控訴人らは、右しょうようは村木税理士を疎外して宅野事務員に対してなされており、異常であり、適正でない旨主張するが、右係官らが村木税理士を疎外したことを認めるに足りる証拠はない上、前記のとおり同税理士から担当者は右事務員である旨告知された経緯に照らし、右しょうようが異常であり、適正でないということはできないから、控訴人らの右主張は採用できない。」をそれぞれ加える。
3 同一四枚目裏三行目から四行目にかけての「税理士ではない宅野事務員を立ち会わせた違法なものである旨主張する。」を「税理士ではない宅野事務員を違法にも立ち会わせたことになろうと主張する。」に改める。
4 同一五枚目表四行目の末尾の次に「したがって、宅野事務員を立ち会わせたからといって、違法とはいえないし、調査に当たらないということもできない。」を、同行目の末尾の次に行を改め、次のとおりそれぞれ加える。
「 次に、控訴人らは、当初申告書には本件不動産につき別件訴訟が係属中である旨を記載した文書が添付されていたので、右係官らがその申告が不適正であることを発見するに足りるか又はその端緒となる資料を発見したものではない旨主張する。
しかしながら、後記のとおり当初申告において本件不動産につき別件訴訟が係属中である旨を記載した文書が提出されていたことは事実であるが、右にいう資料は文書に限られるものではなく、税務署職員による質問に対する納税者等の陳述等を除外すべき理由はないし、右当初提出文書と右陳述等を総合して右にいう資料を発見したということを妨げるものでもない。右係官らが調査の結果をまとめた上で修正申告のしょうように及んでいる前記経緯に照らすと、右係官らが調査の結果当初申告が不適正であることを発見するに足りるか又はその端緒となる資料を発見したということを妨げないものというべきである。」
5 同一五枚目裏一行目の「個別的事情によって異なるものであり、」を「個別的事情によって異なるものであるから、幹夫や和夫に対しては過少申告加算税が賦課されていないからといって、直ちに、本件修正申告が更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後になされたものとはいえないということはできず、かえって、」に、同三行目の「いうべきである」から同五行目の末尾までを「いうべきである。」にそれぞれ改め、同行目の末尾の次に行を改め、次のとおり加える。
「 控訴人らは、控訴人らがやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意して修正申告書を提出したものではない旨主張する。
しかしながら、控訴人らが前記のとおり田中係官らのしょうように応じて修正申告書を提出した以上、特段の事情のない限り、右認識を有していたというべきであるところ、控訴人らが通常の納税者がなすべきことをしたというだけでは右特段の事情があるということはできず、他に右特段の事情を認めるに足りる証拠はない。」
6 同一五枚目裏八行目から九行目にかけての「修正申告を強くしょうようして本件各賦課決定をしたのは不当である旨主張する。」を「修正申告を強くしょうようして本件各賦課決定をしており、このような段階における修正申告は更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後のものとはいえない旨主張する。」に改め、同行目の末尾の次に行を改め、「 過少申告加算税が賦課されるかいなかは、個々の相続人の個別的事情によって異なるものであるから、幹夫や和夫に対する被控訴人の対応いかんをもって、直ちに、控訴人らの本件修正申告が更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後になされたものとはいえないということはできない。」を、同一〇行目の冒頭に「なお、」をそれぞれ加える。
7 同一六行目表六行目の「違法となるものではないことは前示のとおりであり、」を「違法となるものではなく、」に改める。
8 同一六行目裏四行目の末尾の次に行を改め、次のとおり加える。
「 したがって、控訴人らの右主張は採用できない。」
第四結論
よって、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は正当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野寺規夫 裁判官 矢﨑正彦 裁判官 飯村敏明)